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探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点のodyssのレビュー・感想・評価

2.5
【探偵はおBAKAである】

第一作も感心しなかったのですが、今回も「うーん」な出来でした。

全体の有機的なつながりという点で、まず問題なのは冒頭近くの女に入れあげるところ。ヌードやセックスシーンはまあ悪くないけど、あととの関連が 全然ないんですよね。こういうシーンを入れるなら、全体の流れの中でやってほしい。フランス料理を食べに行ったら中華の前菜が出た、みたいなもので。

前作もそうなんだけど、ミステリー・探偵ものとして見て「?」な部分が多い。
例えば、依頼人がなぜ依頼をしてきたのかという点。依頼の動機としては、常識的に考えてすごく弱い。実は何かあるんじゃないかと考えるのが探偵だろうと思うんですが、そこに考えが至らない。

次に、圧倒的にクロに思える○○○と直接話をするシーンがあって、しかしその後も探偵は考えの方向性を変えていないところが「?」。ふつう、少し考え直すんじゃないかな。なのに硬直したオツムの持ち主である探偵は全然相手の言うことを受け入れていない。あれでよく探偵が勤まるなとびっくり。

それから、探偵が次々と襲われたり、関係者がおびえたり、という状況設定に私は納得できませんでした。最後のバトルシーンのあとでなぜ自分を襲ったのか探偵は問いただしますが、あの答にうなずける人はいないでしょう。そもそも、ああいうことがあったら○○○にとっては逆に致命傷になるところ。そこに考えが至らないんじゃ、あまりにお粗末。子供の学芸会じゃないんだぞー(笑)。

警察が動かない理由なんかも同じ(実際、動いている様子はありませんでしたよね。動いていたら、被害者と旧知の仲である探偵のところにも聞き込みで来るはずだから)。あまりにマンガチックな設定で、とてもじゃないけど大人が納得できるような作りじゃありませんね。

まあ、この映画、ミステリーというよりはハードボイルドなので、女を抱くシーンと格闘シーンを入れておけばそれらしくなると制作側は考えているもかも知れないね。でも、今回の話では主人公は探偵としてあまりに無能で、看板を下ろしたらどうかと言いたくなっちゃう。大事な情報は全部外から来てるでしょう。自分じゃ事実上何もしていない。これじゃ、誰も頼みに来ませんよ。廃業確実。

また、真犯人の正体にしても、エラリー・クィーンが『スペイン岬の謎』で戒めたやり方がそのまま取られていますね。或いは、ヴァン・ダインの20則の第11に違反している疑いもある。(なんて言っても、知らないだろうな、この探偵は。)

というわけで低評価なんですが、前回より格闘シーンが増えて、なんやかや言っても格闘シーンは映画チックで効果的なので、第1作より10点上げて50点としておきます。考えずにぼおっと見る分にはいい作品だという意味で。

あ、それから最後で尾野真千子がヴァイオリンを弾くシーンで、もう少しヴァイオリニストらしさを出してほしかった。つまり、専門家にもっとちゃんと教えてもらえ、ということです。CDを何枚も出している著名なヴァイオリニストという設定なのに、最後を除いてヴァイオリンを弾くシーンがなかったから、「おお、やっとか」という感じで見てましたので。ちなみに、弾いていたのはラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」で、これはもともとはピアノ曲ですが、タイトルからして犠牲者を偲ぶ意味がこめられているのでしょうね。その点は、考えた選曲だなと評価したいと思います。
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