マルケス

君と歩く世界のマルケスのレビュー・感想・評価

君と歩く世界(2012年製作の映画)
4.0
映画を観すぎかなーと思ってた時期があった。満腹なのに食べ物を詰め込むようで、飽和状態の感性はどうしようもなく鈍くて。
そんな時に出会ったのがこの作品だった。素直に良かったと思えた。まだ震える感性が残ってた。心地いい余韻、鑑賞後のこの余韻が好きだったと思い出せた。

オーディアール監督の画は面白い。画面のトーンは鈍い色合いが多く、人物も風景もいわゆる「きれいに」「美しく」撮ろうとはしない。アップを多用し、ノーメイクの表情までありのままを映そうとする。

事故で両脚を失ったステファニーと愛し方を知らないアリ。体と心。どちらが欠けても満たされない。その描き方がリアル。慰めや気遣いより、闘う姿が人を奮い立たせることがある。アリが最後にあの一言を言えて良かった。

ジャケ写からの甘いラブストーリー予想は見事に裏切られた。原題の『錆と骨』は殴られた時に口の中にひろがる味の喩え。痛くて硬派で、大腿骨並みに骨太。
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