えす

脱獄の掟のえすのレビュー・感想・評価

脱獄の掟(1948年製作の映画)
4.2
超絶傑作。「火」を点けることで暴力が発動し、デニス・オキーフの過去は運命の暗示となる。光を捉える感覚が抜群に良い。森に差し込む木漏れ日や、瞳の反射光など、黒が支配した画面に際立つ。マーシャ・ハントにあんな子犬のような眼差しを向けられたら、行動に迷いが生じてしまうのも無理はない。中盤では拳銃を拾う行為によってメロドラマとしての強度が高まり、その愛が結実する場所が「火」と対称的な海辺というのが見事だ。隔絶を表す金網はクレア・トレヴァーが身に付けたベールに変奏され、彼女の心理的葛藤を視覚化するように夜霧が覆う。この視界不良の中、音を頼りにした銃撃戦が堪らない。
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