ヘソの曲り角

オペラハットのヘソの曲り角のレビュー・感想・評価

オペラハット(1936年製作の映画)
4.2
『素晴らしき哉、人生!』以来のキャプラ。前半は「まあ古典だしこんなもんかな」と思って見てたが貧困してる農家のおっちゃんが屋敷に乗り込んでくるところで一気に真剣な話になって怒涛の後半戦が始まる。色々ツッコみたくなるところはあるけどとにかくいい映画だった。群衆を映すショット全部で自然と涙が出てきた。泣けるぜ。ゲイリー・クーパーすごいな。

前半の、急に金持ちになった田舎者と記事をすっぱ抜くために近づいた女記者というロマコメ的展開もそれなりに面白いけど後半それがひっくり返ってマジメな話になるのがすごい。意外とドライな冷静さと手すりを滑って降りるような無邪気さとすぐ殴る暴力性を共存させている主人公のキャラを正直コメディによくある誇張した性格と甘んじて受け入れていたがまさか法廷で精神学者に「ソウウツだ!」と言われるとは驚いた。たしかにこの主人公はなんらかの精神疾患を抱えていると言っても間違いじゃないし本作でもそこに関しては否定してない。それでも彼が確実に「異常」ではないと本作は示している。イカれてると嗤うのは簡単だが、その気難しさ以上に彼の独特かつ魅力的な人間性が人々を虜にするのもまた間違いないのだ。