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影なき狙撃者のotomisanのレビュー・感想・評価

影なき狙撃者(1962年製作の映画)
4.0
 思えば随分のんびりした時代だ。大統領候補者の警護で駆け回るのは諜報系軍人ふたり?縦割り行政でシークレットサービスが動かないのか、候補者風情を警護する謂れは未だないのか。対して軍人は一報入れば千人動員できてしまうという、戦争が終わったというのにどういう体制なのだ。

 その一報も最前までソ華鮮、東側の謀略で米国某要人を暗殺せよと洗脳され、友軍一小隊を一人奮戦の末生還させた記憶を刷り込まれて送り返された隠れ工作員、米軍元大尉にして名誉勲章授与者、マッカーシーもどき上院議員の義理の息子でさらに政治妖怪ママの息子の去就に掛かっている。
 洗脳の仕組みを破ったかに見えて、それを信じきったような元上官、少佐による同人物放りっぱなしも腰抜かしもので、瀬戸際の千人より今その場の二人でも三人でも心得のある者が手下にいないのか?大統領選立候補集会がその狙いと知れても一向に「一報」を寄越さない元大尉が既に左派系上院議員とその娘、各1を暗殺実行コードの混信のせいで誤って殺害した容疑者であると知ったうえでの放置もまた、法的根拠優先の社会における模範者たるべき上級官職者のジレンマと覚えるところだろう。

 しかし、その一報を発しない元大尉も自由の人である。軍の動員に頼らず、本人の否定に合えば手も足も出せない謀略の黒幕、自身の母親と彼女が操るニセの保守政治家である義理の父を裏切り者として射殺することを選ぶ。
 この二人は合衆国にもまして何より元大尉をこそ裏切り、東側に売り洗脳を浴びさせ、戦友を殺させ、偽りの名誉勲章を授与させ、暗殺者に仕立てさせ、大統領選挙の動向と冷戦を煽る世論を操作するべく動いている。
 この母親の立場をとった政治キチガイはきっと、彼の義父、亭主を大統領に据えたのち、名誉勲章の名声にあやからせて元大尉もいづれは大統領にしようと目論むのだ。そのとき、亭主はどんな状況で暗殺されるのだろう。

 こんな話を母親当人が漏らすのを聞いてしまうと、政治サスペンス色は一掃されママ系ホラーでうなされそうだ。
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