明石です

私はゾンビと歩いた!の明石ですのレビュー・感想・評価

私はゾンビと歩いた!(1943年製作の映画)
3.7
1940年代の準元祖ゾンビ映画。椰子の木と南国の果実につられハイチにやってきた女性がゾンビと歩く話。

第一印象から愛想のよい好青年と、初っ端は剣もほろろな無愛想男との間に挟まれた女性が、だんだんと後者の男に惹かれていくという『高慢と偏見』的な王道ラブストーリーを主軸に、ゾンビが脇役として周縁を飾る格好。とりあえずホラー映画ではないですね笑。

熱病に脊髄を蝕まれ、自分の意志では話すことも動くこともできない「生ける屍」と化した夢遊病患者の奥さんをゾンビと呼ぶ男性陣。ゾンビじゃないじゃん!というツッコミは現代の虫眼鏡を通してるから。彼女(主人公)が私はゾンビと歩いたと言うならそれで良いでしょう。とはいえジャケットに写ってる目ん玉がピンポン玉みたいに飛び出た大柄なブゥードゥー式ゾンビは普通に怖かった、、彼が夜中に無言でにじり寄ってくるシーンは本作唯一にして最大のホラーでした。

それから古き良きナレーション方式がとっても好感。「輝く星を数え、頬に温かい海風を感じ、深呼吸をして美しいと感激する」「ただ息をしているだけの虚しい肉体に命を与えるのです」などなど、目を閉じてても情景が浮かぶような詩的で気の利いたセリフはモノクロの映像にカラフルな彩りを与えますね、多分。いわるゆハリウッド黄金時代の脚本がいかに質が高かったかを垣間見せてくれる。こういう作風好きだなあ。

——好きな台詞
「馬に正面から向かっちゃ駄目よ。背中を見せるの。そうすれば勝手についてくるから」
「あらら、男と同じね」
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