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アリゾナ・ドリームのleylaのレビュー・感想・評価

アリゾナ・ドリーム(1992年製作の映画)
4.0
舞台もアメリカで、俳優陣もハリウッドスター。独特の寓話感はあるけど、いつもよりドタバタ劇は少なくクストリッツァ色は抑えめ。私はけっこう好きな作品でした。途中までコメディとして見ていたけど後半は深刻になっていきます。

NYで働くアクセル(ジョニデ)は叔父の結婚式に呼ばれアリゾナへ。そこで出会う未亡人と義娘2人との恋と別れを描く。

夢が1つのキーワードとなっていて、登場人物全員に夢がある。アラスカで魚のオヒョウを釣りたい、キャデラックを売ってアメリカン・ドリームを掴みたい、映画スターになりたい、空を飛びたい、亀になりたい。

しかし、誰一人として夢を叶えることができず、暗い現実の中を生きて行かなければならない。

「おはよう、コロンブス。アメリカには新たな発見がないんだよ」アメリカ(=アリゾナ)にはもう夢はないのだとクストリッツァが言っているように思えた。

「子供が大人になる時は悪夢をみるんだ」アリゾナで起きる出来事は、23歳の主人公アクセルが大人になるための悪夢(=通過儀礼)だったのだと思いました。

「俺たちに明日はない」でカッコよかったフェイ・ダナウェイが未亡人役に。当時20代後半のジョニデと40代後半のフェイ・ダナウェイが恋愛するという設定がゴージャス。

魚が空を飛んだり、ヴィンセント・ギャロが「北北西に進路を取れ」の真似をしたり、フェイ・ダナウェイが手作り飛行機で空を飛んだり、楽しいシーンも多々あって面白かった!

観終わって調べてみると、クストリッツァが大学で講師をしているときに生徒から持ち込まれたシナリオを映画化した作品なのだとか。

この撮影中にボスニア紛争が起こり、故郷を案じるあまり制作自体が危ぶまれたという。この映画の後すぐに「アンダーグラウンド」を制作したそうです。
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