櫻イミト

フォーゲルエート城の櫻イミトのレビュー・感想・評価

フォーゲルエート城(1921年製作の映画)
3.0
ムルナウ監督による「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922)の前年のミステリー作品。脚本は「カリガリ博士」(1919)「サンライズ」(1927)のカール・マイヤー。美術は「カリガリ博士」のヘルマン・ヴァルム。米題は「The Haunted Castle(幽霊の出る城)」。

19世紀半ば。フォーゲルエート侯爵の城で狩猟大会が催され友人たちが集まっていた。そこへ招かれざる客がやって来る。自分の弟ペーターを殺して財産を独り占めしたと噂されるエーチュ伯爵だ。しかも、殺されたペーターの未亡人が再婚相手の夫と招待されていたのだ。。。

巨匠ムルナウ監督の作品だと身構えて観ていたら、実に意外なラストで驚いた。これこそミステリーのジャンルの一つ“オールド・ダーク・ハウス”の原点だ。米題「幽霊~」は全くのミスリードで超自然現象は扱われない。ただし本筋に関係ない悪夢のシーンで「ノスフェラトゥ」を予感させるワンカットあり。また、DVDジャケットに用いられた心情表現映像は最高だが、他に特筆するようなカットは見当たらなかった。

ムルナウ監督の映像表現は芸術性があるが、基本姿勢はエンターテナーであり通俗性も持ち合わせていることを忘れてはならない。
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