菩薩

恋の浮島の菩薩のレビュー・感想・評価

恋の浮島(1982年製作の映画)
4.0
モラエス(役)のたどたどしい日本語がなぜだか癖になるが当の本人は確かバッキバキに流暢に日本語話せたよなと思い出した。故郷から遠く離れた異国の地で愛に殉じた異邦人とすれば聞こえはいいのかしれないが、終盤近くの著しく生活能力を失した独居老人の退廃ぶりがもはやホラーだし未来予想図でしかなくて…。類似作品にオリヴェイラや清順が並ぶのもごもっともと言う幻想と怪奇の中間地点で更に生と死とが混濁していく。丸い小型の鏡の中で展開される三田佳子との入浴シーンをはじめ鏡像の用い方に驚かされる場面が多々ある。漢字もろくに読めないのであろうチヨコと自身の死の再現するあたりで尚のこと虚構性ないし演劇性が立ち上がる。墓守として生涯を終えると豪語しながら最後には腐乱死体に成り果てるモラエス、モラエスの愛情を巡る女同士の争いの中で奈落の底に突き落とされる車椅子の画家…。正しき喪の作業へと至る過程は殊更複雑であるが、最後は見事に美しく炎が散る。
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