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歓喜に向ってのpikaのレビュー・感想・評価

歓喜に向って(1950年製作の映画)
4.5
あるオーケストラのバイオリニストが練習中に一本の電話を受け、ある女性の死を告げられる所から始まり、出会いは遡ること7年前・・・といった具合に展開していく一組の男女の愛と人生の物語。

見渡せばそこら中ゴロゴロと転がっているようなとても身近で普遍的な愛を描いていて、劇的でもなく強いメッセージがあるわけでもなく押し付けるものでもなく、誰もが持っている「人生における愛とは」というものを丁寧に分解し観客に寄せ、すべての人へ「歓喜」を届けるような、心にグッと響く感動がある。

スピーディにポイントを抑え、さり気ない演出で多くを語ってしまうベルイマンの鮮やかな手腕が効いていて、他人のよくある恋愛話と距離を置くことなく本人にしかわからぬような感情さえ共有させてしまう映画の醍醐味を味わった。
ラストシークエンスは鳥肌と涙もの。ブワッときた。



オーケストラのマエストロをスウェーデン映画の父でありベルイマンの「野いちご」で主演したシェストレムが愛嬌と貫禄たっぷりに好演。
マイ・ブリット・ニルソンはベルイマン作品3作に出演していてオドレイ・トトゥとイングリッド・バーグマンを足して割ったような美女で、シッカリと自分を持ち愛情と優しさに包まれた家庭に幸せを感じる良妻を好演。
主人公演じるスティーグ・オリンは初めて見たけどハリウッドでも活躍しているレナ・オリンの父親らしく、自尊心と野心だけはたっぷりあって頼りないけど心根は優しい憎めないキャラクターを好演。
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