もとまち

札束無情のもとまちのレビュー・感想・評価

札束無情(1950年製作の映画)
3.8
刑事と強盗犯がどちらも超絶行動派なので物語が爆速で進む。刑事側が盗聴やら変装やらあの手この手で犯人を追い詰めていくのが面白いし、対する強盗犯側もめちゃくちゃ非情なのが最高。特にリーダーを演じるウィリアム・タルマンの圧倒的な存在感と言ったら。『ヒッチハイカー』(1953)では極悪殺人鬼を熱演していたが、本作でも不敵な笑みを浮かべたクールな悪党を飄々と演じきっている。彼が邪魔になった仲間をワンカットで瞬時に銃殺するシーンが実に素晴らしい(ここの厭らしい死体の見せ方がとてもフライシャー的)。物語の贅肉を極限まで削ぎ落とし、即物的な展開だけですべてを語り切るフライシャーの演出はすさまじく、ここまで来ると実験的とすら思えてしまう。キャラクターの説明シーン・移動カットは極力排除し、強盗の計画はシェードを下げるついでに説明、準備描写もなく次の瞬間には強盗が始まっている。強盗が終わればカーチェイスが始まり、犯人は窓ガラスに銃口をブチ込んで発砲する。純粋なアクションに次ぐアクション。情動的なドラマなど入る余地のない68分。そのシンプルさゆえに物足りないところもあったが、まさしく「札束無情」を体現したラストシーンを含め、とても楽しめる映画だった。
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