えびちゃん

季節の中でのえびちゃんのレビュー・感想・評価

季節の中で(1999年製作の映画)
3.7
ベトナム生まれ、アメリカ育ちのトニー・ブイ監督が、ベトナムの美しさに魅せられ綴った、"太陽に祝福された" ベトナムへのラブレターのよう。
裕福ではないが、素朴でひたむきな人々の営みの愛おしさ、美しさにずーっと目が幸せだった!
ハスを摘み売る女性と、女性の雇い主でハンセン氏病に罹患した元詩人との心の交流、高級娼婦とシクロ乗りの恋模様、ベトナム戦争の元兵士とストリートチルドレンの関わりが綴られる群像劇。原題のThree Seasonsはそれぞれの関係性を季節として言い表したものなのかな。
娼婦ランが言う“太陽に祝福された人たち” は高級ホテルに泊まる人たちじゃない。素のベトナムに生きる飾らない人たちのことだ。うだるような暑さの中、本物の生花のハスを売り歩く人、お客を安全に運ぶシクロ乗り、雨の中たばこやガムを売る少年、ひとりひとりが太陽に愛され、ひたむきに生き、ベトナムという地をつくっている。
湿気と熱気と、唐突にそこから遮断する雨。そして少しの官能。いろんな意味で目が潤った。ベトナムの熱気に当てられて、この厳しい残暑も愛せそうな気がする。(9月過ぎても残暑って言うのかな)
ただ群像劇でありながらそれぞれのエピソードがほとんど重なり合わないのがちょっと残念。
たまには脱がないハーヴェイ・カイテルを愛でる。脱がなくてもやっぱり好きだな〜。でもやっぱり脱いでほしいな〜。
じんわり沁み入る素敵な映画を教えてもらえて幸せ。
えびちゃん

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