名もなき技術者

黒部の太陽の名もなき技術者のレビュー・感想・評価

黒部の太陽(1968年製作の映画)
3.7
黒部ダム建設のためのトンネルを掘る男たちとその家族の物語。
もっとトンネル建設とその周辺の男・家族に焦点を当てればまとまりが良くなったのではないだろうか。重機輸送作戦などについて微妙に触れているが、もっと捨てられたはずだろう。
岩岡親子の付かず離れずの描写が上手いなと思った。そもそも剛が、土建屋になる気はなくても建設系に行ったことは何か父親への思いが無ければできないことだ。その後、現場でも作業員の安全について親子の対立が起こるのだが、危機に際し微妙に親が子の肩をもつことになるのも良い。剛の新時代の考えと源三の旧時代の考えは相いれないものの同じ立場に立っているため、ここで全面的にバックアップするのも違うし、全く肩を持たないのも違う。
ただ、最後になって実は源三も現場のことを思いやっていましたみたいな感じにするのは違うなと思った。そういう思いがあったら黒四ダム建設ではもっと行動を抑制したはずでしょう。
本作の強みは、なるべく工事現場を映そうと努力した点だろう。これによって難工事の実感を持つことができるようになっている。工事中の事故についても、なるべく事故を避けるようにしたのだが、事故が起こってしまったという形にしていた。これを、避けられるのに不注意で事故が起こってしまったといった形で描いてしまうと「海峡」のように消化不良になりかねない。