肉鹿

低開発の記憶-メモリアス-の肉鹿のレビュー・感想・評価

低開発の記憶-メモリアス-(1968年製作の映画)
3.5
キューバ。革命成立後の1961年。社会主義のせいで多くのお金持ちが国外へ亡命したが、資産家の男はひとり残った。しかし西欧人のような"高開発"の生活への憧れが燻り続ける日々にひとりの美しい女と出会う。

インテリかぶれの主人公視点で進んでいくけど、彼がなにか言えば言うほど「ぐちぐちかっこ悪いよね…」てなってしまう感じがちょうどよくてキューバ全体を皮肉混じりに批判してるように見えるのがおしゃれでした。この絶妙なバランス感覚のおかげで視点が平等なのが気持ちいい👏

でも主人公の行動はとても気持ち悪くて、勝手に期待して勝手に幻滅する姿を克明に描いててすごい浅ましかった。去った妻の服を着せて悦に浸ろうとするとこなんて気持ち悪さの極みでおすすめw

そもそも男女の関係を国同士の関係や旧世代と新世代の関係に暗喩に例えてるのもわかりやすく、"低開発"なキューバの象徴とされちゃう女の子との危うい関係性はかなり楽しい😆弱者と強者がコロコロ入れ替わるのもおもしろいし、結末も苦々しいけど妥当。この苦々しい歪さが当時のキューバの歪さみたいでとても好き。

全編白黒でショッキングなドキュメンタリー映像も用いながら進むから重苦しさはあるけど、ただの庶民より立場が上の限られた時間を過ごそうとしている男の姿は物哀しくも滑稽だったので意外と飽きることなかったです。
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