ドント

不安は魂を食いつくす/不安と魂のドントのレビュー・感想・評価

3.5
 1974年。おもしろかった。掃除婦の初老女性がふらりと立ち寄った移民の集まるバー。そこで知り合ったモロッコ出身で黒人の青年となんだか妙な流れで恋仲になり結婚にまで行き着くが、「おばさんと移民青年」というカップルをすんなり受け入れる土壌はなかったらしく……周囲からの冷たい目がふたりを苛み……しかし……
 50年前のお話であるが今にも響く恋愛/悲恋モノであると思う一方、当時の西ドイツの社会状況は未知の世界ながらゴリゴリの差別が露骨にゴリゴリすぎてメロドラマか昼ドラみたいなことになっている。「あの人たち体洗わないんでしょ? フケツよ!」とか。子供たちも結婚を報告されて呆れてキレて帰ったりする。とてもわかりやすい。この「愛し合っているのに差別される私たち!」というわかりやすい図式にわずかに鼻白むものがあったけれども、これも後半の、この、人の哀しみを飲み込ませる流れのためだったりする。
 枠で切り取る、「額縁」をデカく取るなどのカメラワークや演出は、大胆で美しく思える場面と大仰に過ぎる感触を覚える場面の両方があってなかなかに悩ましい。高級レストランとか浮気のシーンとかはすごくいいのだが、全体に「ぎこちない」のだ。ただそのぎこちなさが無いと、本作の味わいも損なわれてしまうような気もする。いろいろ書いたけど、社会性を噛ませながら展開するメロドラマとして面白く観れたのであった。
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