茶一郎

リングの茶一郎のレビュー・感想・評価

リング(1927年製作の映画)
4.0
「ヒッチコック版ロッキーは恋の鞘当てドロドロの三角関係」

 いわば、ロッキーとアポロがエイドリアンを奪い合う。ヒッチコックが一度、ボクシング映画を作ろうとすると、オトコ同士のアツさの中にオンナが絡んだ泥沼の人間関係が混ざりこんでしまうのだ。

 遊園地の見世物小屋でアマチュアボクサーとして、その強さを誇っていたジャックの元に、ボクシング世界チャンピオンのボブが来た。二人は、ボクシングの熱きライバルとなって争い合うのと同時に、見世物小屋のチケット売りをしているヒロイン:ネリーを奪い合う。
 まず、映画を見ていると、冒頭の遊園地の出し物をモンタージュでつないだハッタリ込みの視覚効果に「映画だ!映画だ!」とテンションが上がる。その他、グラスに注がれたワインの泡が消える様子と、ヒロイン不在の乾杯の虚しさを重ねたり、単純にボクシングシークエンスの語り口がとても手際良かったりと映画的快感度指数が高かった。

 裏切りと嫉妬の象徴である蛇の形をした腕輪「リング」のようにねじりにねじれた三角関係を解決するのは、一対一オトコ同士の闘いの場であるボクシングの「リング」。犯罪ナシ、サスペンスとかけ離れたような「ボクシング」というジャンルモノでも、しっかり登場人物の心理が切迫したサスペンスを作ることができるということに驚く。男らしいヒッチコック。
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