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ソフィー・マルソーの刑事物語/ポリスのnetfilmsのレビュー・感想・評価

4.0
 麻薬捜査官の男が強盗容疑で捕まえた男の罪を帳消しにする代わりに、アラブ系の男とその情婦を逮捕する。ピアラの映画はいつも導入部分が唐突に始まる。今回もいきなり取調室の中で、既に犯人と刑事とのやり取りがかわされている。カメラは主に人物の表情に密着する。狭い室内でも機動性の優れたスーパー16ミリのカメラの使用により、役者の演技をよりリアリティのある躍動感のある演技として捉える。盗聴により警察は動かぬ証拠を見つけ尋問するが、娼婦はなかなか口を割らない。アラブ系の男は収監されるが、情婦はかろうじて釈放される。ここまでの流れはまんまフリードキンの『フレンチ・コネクション』だが、バーで逮捕した女と再開するところから、微妙にテイストを変えていく。

 この映画が異様なのは、風景ショットや無人ショットがまったく出て来ないことだ。常に人物の表情を捉えたカメラは、人物の全景を捉えることも稀で、出来るだけ人物の表情をクローズ・アップで追い続ける。同じスーパー16ミリの使用でもロメールが機動性を重視し、スケッチのようにラフな作品を志向していたのに対し、ピアラは役者の内面から滲み出る情念のようなものを捉えようとしている。夜のシーンなんて黒が潰れて、なかなか観づらいのだが、この独特の質感がリアリティを生んでいる。ジェラール・ドパルデューとソフィー・マルソーが車に乗るシーンも乗り物が動いているかどうかはほとんど関係ないかのように撮っている。刑事モノでありながら、活劇の要素は放棄して、役者2人の内面の動きににじり寄るピアラの力量に感服する。撮影監督のルチアーノ・トヴォリはダルジェントの『サスペリア』を手掛けた審美的なフレーム・ワークを得意とするカメラマンである。クライマックスのドパルデューの全身ショットには男の悲哀を感じずにはいられなかった。売店にさりげなく飾ってあったトリュフォーの本に、ピアラのトリュフォー愛が垣間見える。
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