ちろる

カラフルのちろるのレビュー・感想・評価

カラフル(2010年製作の映画)
3.7
死んだはずのぼくは自殺してしまった少年マコトという少年の体に“ホームステイ”をすることになる。
ぼくはなぜマコトにならなければならなかったのか?
マコトはなぜ自殺してしまったのか?
謎を、ときながらぼくはマコトとしてもう一度人間の世界を生きる。
それは過酷で、切ないもうひとつの物語の始まりでもあった。

こちら、作家・森絵都のベストセラー小説を原恵一監督がアニメーション化したファンタジーアニメーション。
アニメーションならではの映像表現で主人公の精神世界を見せていく。
先にタイの実写版と、日本の実写版『ホームステイ』を観てしまったので、ストーリーに新たな感動というのはなかったが、「カラフル」というタイトルの通りの色彩豊かな表現は、アニメならではだったので、映像は3つの作品の中で一番美しかったのではないだろうか。

この作品だけの事で語ると、中学高校の時期が全くいい思い出がなかったという原恵一監督が、同じく心弱く追い詰められて自殺まで図ったマコトに少なからず共感する部分もありこのアニメーションを引き受けたのだという。

そういった繊細な想いが彼のアニメーションに載って、同じように苦しむ思春期の少年少女の心に響いてくれればこの作品も存在する価値があるのだろう。

皆、はじめは真っ白で生まれてきて、少しずつ濃かったり薄かったり、明るかったり暗かったり色んな色をつけて生きている。
その色は環境によって変わったり、一緒にいる人によって違う色を放ったりする。

自分の持つその色は、自分には相手からどんな色に見えてるかがわからない。
そしてそれがわからないから綺麗だったりもする。
逆に醜かったりも・・・

時に受け入れられない相手のその色も、それはその人の全てではなくて、ほんの一部。
苦しいけどそれを受け入れて許すことも、生きる事なんだ。

たかが数十年の命、終わりたくなくてもいずれかってに終わりがくるのならばいっそ、がむしゃらに生きてみるのも悪くないよ。

今死にたいと思ってる人がたまたまこの映画を観るってことも少ないでしょうが、この映画のメッセージ、そうした魂に響くといいな。

背景美術がとても美しく、世界観が引き込まれるアニメーション作品としても見応えのあるものだったので是非多くの人に観てほしい作品でした。
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