小

VIVA(原題)の小のレビュー・感想・評価

VIVA(原題)(2015年製作の映画)
3.8
LBFF(LATIN BEAT FILM FESTIVAL)2016で鑑賞。2016年アカデミー賞外国語映画部門アイルランド代表作。ナカナカ良かった。ヒューマンドラマとして良いだけでなく、忘れていたものを思い出す映画。

主人公はキューバの首都ハバナで暮らす、美しい青年ヘスス。美容師の仕事をしている彼は、ある日女装に目覚めドラァグクィーン(女装する男性)ショーのオーディションを受け、ビバという芸名でステージに立つ。

情熱的な歌を口パクで、体いっぱいに表現する彼のショーは、初めこそひどいものだったが、やがて才能が開花。ショーは彼の自己実現の場となっていく。

そんなヘススのもとへ15年ぶりに父親が戻ってくる。細身で繊細なヘススとは反対に、元ボクサーの父親はマッチョで暴力的。ケンカで人を殺すなどたびたび刑務所に入っていた。

父親はゲイ嫌いで、ヘススのクラブの活動を認めてくれない。優しい性格のヘススは、幼いころ蒸発し、顔も覚えていなかった父親を慕い、その価値観に縛られ、葛藤するが…。

社会主義国キューバは現在、市場経済の導入にも積極的に取り組んでいて、約200の職種で自営が認められているらしい。しかし、自営もそうだけど、たとえ国営の仕事に就いたとしても、十分な給料はもらえず、親戚などからの海外からの送金や何らかの副業をして生計を立てざるを得ない。

なので、キューバの人々は外貨を欲しがる。観光客を探してうろついたり、海外での活躍を夢見るスポーツ選手や彼らに乗っかろうとする女性などが登場する。

生活が苦しいこともあってか、いい意味でのおせっかい、助け合いが浸透している。ヘススを心配し、父親から離して面倒をみようとするクラブの“ママ”。お金のないときはモノで理容代金を支払う近所のオバサンは、ヘススが困っていた時にはご飯を作ってきてくれる。

そしてラストはとってもカタルシス。親は子の幸せを願い、貧しくても皆が寄り添い絆を強め、生きていく。このようにモノはないけど温かい関係を思い出すと、モノはあるけど冷たい関係が主流と思われる日本の都会暮らしは、もう少しなんとかならないのかなあ、と。
小