Omizu

運命の逆転のOmizuのレビュー・感想・評価

運命の逆転(1990年製作の映画)
3.3
【第63回アカデミー賞 主演男優賞受賞】
1980年に実際に起こったクラウス・フォン・ビューロー事件を映画化した作品。アカデミー賞では監督賞、主演男優賞、脚色賞にノミネートされ、ジェレミー・アイアンズが主演男優賞を受賞した。

うーん、こんな終わり方ある??思わず「ここで終わるのかよ!?」と言ってしまった。

もちろん元の事件がグレーだから一方的に決めつける結末はよくないと思うが、それにしても投げっぱなし感が悪い意味で際立ってしまっている。

妻殺しの容疑で裁判にかけられる貴族男性、彼らに何があったのかを弁護士視点で語っていく。それが一応の軸だが、亡くなった妻のサニー、容疑をかけられたクラウスの視点も入ってくる。

いつも通りグレン・クローズは素晴らしい。精神が不安定な貴族の妻という役柄を鬼気迫る迫力で演じていた。ジェレミー・アイアンズはそれと対極。常に冷静沈着な貴族を上品に演じていた。冷静すぎて怖いくらい。

ミステリーとしては「何が真相なのだろう」と興味をそそられる題材ではあるが、結局そういう着地をするのか、と落胆。事件概要的にはこうするしかなかったと思うけどスッキリしない結末。

面白いっちゃ面白いけど、クオリティとして完璧かというと首を捻らざるを得ない。裁判劇なのに裁判シーンがあまり出てこず、判決までに至る経緯もダイジェスト的。ミステリーの面白さは担保されているが、裁判劇としてみると不満が残る。

ジェレミー・アイアンズもいいのだが、やはりこれでグレン・クローズが助演でノミネートされていないのはおかしい。この映画の一番美味しい役はグレン・クローズなのに。

過去と現在を行き来する演出は悪くはないけど、いささか落ち着きがない。弁護士視点で一貫してもよかったのではないか。重厚なミステリーになりそうなのになんだか軽いんだよね。

普通に面白く観ることは出来たけど、もう少し脚本を練って、この映画独自の解釈を前面に出した方がよかったと思う。
Omizu

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