桃子

引き裂かれたカーテンの桃子のレビュー・感想・評価

引き裂かれたカーテン(1966年製作の映画)
2.9
「軽いドンビキ映画」

ヒッチコック作品をすべて鑑賞していないのだが(いつかはコンプするつもりでいる)、たまにガッカリすることあるということがわかった作品である。はっきり言って、ヒッチコックらしくないし駄作の部類に入ると思う。
タイトルだけは知っていたし、いつかは見ようと思っていた。中身は全く知らずに見たら、スパイ映画だったので驚いたの巻。カーテンって、家にあるカーテンのことではなくて「鉄のカーテン」のことだったのか~~~ ほんとにビックリした。
まず何が気に食わないかというと、キャスティングである。ポール・ニューマンはどう頑張っても物理学者には見えない。詐欺師の方が似合っている。ジュリー・アンドリュースは、どう見ても歌の上手な修道女見習いのお姉さんにしか見えない。「引き裂かれたカーテン」は、「サウンド・オブ・ミュージック」と1年違いなのである。せめて髪型を変えるとかメイクを変えるとかすれば少しは違って見えたはずなのに…
スパイ映画は必ずラブシーンを入れなくてはいけないという鉄則でもあるのか、冒頭からふたりはかなり濃密に接触している。恋人同士という設定だから仕方ないのだが、それにしても最初から凄くて軽く(笑)ドンビキしてしまった。
007は公開されると必ず見に行くけれど、私は基本、スパイ映画って好みではないのだと思う。敵に見つかって速攻で殺されてしまうかもしれないハラハラドキドキは見ていてキツイ。娯楽映画なんだから主人公が殺されるわけはないとわかっていても、どうも居心地が悪いのだ。
綺麗なカラーだし、舞台はヨーロッパで景色は上々、主演のふたりは美男美女でストーリーもちゃんとしている。それでも、この映画は好きになれなかった。唯一、見入ってしまったのはバレエの公演のシーンだった。踊っていたプリマバレリーナは本物で、本業のバレエをしながらたまに映画出演もしていたらしい。船の上のシーンが迫力があった。この時代のことはよくわからないけれど、世界は西側と東側に分れて、水面下や裏社会で動き回るヤバい人たちが沢山いたのだろう。だからこそ小説になり映画になり、娯楽のジャンルとして確立されたのだ。
とはいえ、今はスパイ映画も絶滅危惧種のひとつかもしれない。だからこそ、もうすぐ公開される007の最新作がとても楽しみである。
桃子

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