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ミュンヘンの綯綯のレビュー・感想・評価

ミュンヘン(2005年製作の映画)
3.5
五輪の時に見た映画。

ミュンヘン五輪での人質事件、その報復としてイスラエルをたち謀者を"誅殺"した、ある男の物語。



本作のストーリーは、報復作戦に携わったアヴナーの証言をもとに、実際の出来事をなぞらえている(とされる)。

事件当時の映像と報復作戦の様子、そしてその後の葛藤を重ね合わせるように描いた作品だ。それらを折り合わせるように、巨匠スティーブン・スピルバーグの演出が光る。

香水のシーンめちゃめちゃめちゃめちゃステキ。

駅、影絵の演出。感情が直接的に伝わらないところが憎い。


本作にはミュンヘン五輪と同じ1972年に公開されたゴッドファーザーのオマージュが取り入れられている。時代のビーコンだ。



この映画を見終えたとき、この祭典に伴って巻き起こったもやもやが晴れたわけではない。

むしろ煙の中を進んで、また同じ場所に戻ってきたようだった。

国家の意志に身を委ね、疑念の渦に取り残されてしまった個人。個人の意志で抗えることはそう多くない。

何かを重ね合わせずにはいられない。

ただし煙の中から戻ってきたこの地点は、僕にとって何度目かの場所になった。

その場所で僕らは何を考えるだろう。

何を考えるべきだろうか。
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