五輪の時に見た映画。
ミュンヘン五輪での人質事件、その報復としてイスラエルをたち謀者を"誅殺"した、ある男の物語。
本作のストーリーは、報復作戦に携わったアヴナーの証言をもとに、実際の出来事をなぞらえている(とされる)。
事件当時の映像と報復作戦の様子、そしてその後の葛藤を重ね合わせるように描いた作品だ。それらを折り合わせるように、巨匠スティーブン・スピルバーグの演出が光る。
香水のシーンめちゃめちゃめちゃめちゃステキ。
駅、影絵の演出。感情が直接的に伝わらないところが憎い。
本作にはミュンヘン五輪と同じ1972年に公開されたゴッドファーザーのオマージュが取り入れられている。時代のビーコンだ。
この映画を見終えたとき、この祭典に伴って巻き起こったもやもやが晴れたわけではない。
むしろ煙の中を進んで、また同じ場所に戻ってきたようだった。
国家の意志に身を委ね、疑念の渦に取り残されてしまった個人。個人の意志で抗えることはそう多くない。
何かを重ね合わせずにはいられない。
ただし煙の中から戻ってきたこの地点は、僕にとって何度目かの場所になった。
その場所で僕らは何を考えるだろう。
何を考えるべきだろうか。