AB型の末っ子

ベンジャミン・バトン 数奇な人生のAB型の末っ子のレビュー・感想・評価

4.5
デヴィッド・フィンチャー作品予習5本目に入りました!!

結構前から、ベンジャミン・バトンの話は知ってて、おじいちゃんで生まれて若返っていく、という奇想天外そのものみたいな話なのですがw、今作は、その生涯を壮大に振り返って描いたまさに芸術な映画でしたね…。しかもそれを、ベンジャミンの日記を通じて回想していくのも面白いですよね。

オープニングのワーナーとパラマウントのロゴのシーンがボタンになっていて、特に何も思わずに観ていたのですが、観終わってクレジットが終わった所でボタンになっているパラマウントのロゴがもう一度流れてそこで理解して、めちゃくちゃ感動しました…。
こういう粋な演出も素敵ですよね。

今作は何と言っても目玉なのが若返るブラッド・ピットw
最初はもちろんヨレヨレのおじいちゃんでブラピの影なんて微塵もありませんが、少しずつ身体が大きくなると、顔も声もブラピっぽくなってきました。ある時点からは、CGではなく特殊メイクになって、遂にメイク無しになったと思えば、さらに若返りのためにCGになるという、その変化も観てて面白かったですw
やはり、約10年前の作品なので人間に使うCGというのは今ほどは洗練されていないものの、それでも十分リアルに出来ていたと思います。違和感に感じるとすれば、それは私達がイケメンなブラピの顔を知っていることとベンジャミンが若返っているのが原因だと思いますw

そしてもう一つは、若返りとともに劇的に変化していく時代。ベンジャミンは第一次大戦の終戦日に生まれ、幼少期はニューオーリンズで、青年期は海に出て、そしてその間には第二次大戦も経験します。その後、さらに時代も技術も進んでいく中で、バイクや船に乗っているブラピはめちゃくちゃイケメンでしたねw
新しいものへと変化していく時代について行けたベンジャミン。やはり若返っていくことが影響していたのではと思います。年を取ると、自分が育った環境や時代の文化に落ち着きますが、若い人は、どんどん新しく変化していく文化を楽しむことができます。ベンジャミンが最後まで生を楽しむことができたのはその恩恵もあったのかもしれません。

さらに印象的だったのは、若返っていくことへの周りの反応。本人は、自分の若返りを自分の目では観ることができないので、やはり意識するのは周りの人なんですよね…。エル・ファニング演じる幼少期のデイジーは本当に天使のようでして、ベンジャミンとの関係性が美しかったですが、成長してケイト・ブランシェットになり、ニューヨークに出ると、ちょっと弾け過ぎててベンジャミンと共に少し引いていましたw
そして、その後再会して一緒になるわけですが、その後に見せる老いへの否定的な感覚はやはり、ベンジャミンと共にいるからこそ余計に感じてしまっていたのだろうな、と感じ悲しく思いました。
一方、ベンジャミンの幼少期にピアノを教えてくれたおばあさんが、ベンジャミンに伝えた、自分だけが若返ることは大切な人を失うことでもあると、しかし、大切な人を失って悲しいと感じるからこそ大切な人なのだ、と。
深いですね…。

デイジーが妊娠してからは、ベンジャミンにその若返りの壁が押し付けられることに…。
子どもの父親として共に年を取ることができないという苦しい現実を前にベンジャミンは娘の元を去ることにしました。ベンジャミンの日記を読んでいた娘はその真相を知り、驚く。もう今にも死の迎えを待つばかりの母を前に、本当の父親を知りその生涯を知るなんて、とんでもない話ですw

様々な人に出会い、多くの場所を旅したベンジャミン。ラストに登場人物たちが出てきて、彼らの本質に触れていく所は面白かったですね。
まさに人生讃歌であり、それを若返るベンジャミンだけが見れる世界の姿を語ってくれました。
そして、最後に、冒頭に出てきた巻き戻る時計につながっていく…。

美しかったです。

デヴィッド・フィンチャー監督、毎回どの作品も全く異なる世界観で、どれも異なる新しい感動を届けてくれています。「観る芸術」と言っても過言ではないですねw

それにしてもブラピ、かっこよすぎますねw