ジミーT

Mr.BOO!ミスター・ブーのジミーTのレビュー・感想・評価

Mr.BOO!ミスター・ブー(1976年製作の映画)
5.0
1988年、仕事で初めて香港出張に行き、啓徳空港(カイタク空港・当時)から香港市街に出た時、脳内に響きわたったのは「燃えよ!ドラゴン」のテーマではなく、この「Mr!Boo」のテーマでした。

1992年、また香港出張に行って街に出た時、脳内に流れてきたのは「燃えよ!ドラゴン」でも「男たちの挽歌」でもなく、やはりこの「Mr.Boo」のテーマでした。

1996年、1998年、またもや香港出張に行って湾仔から銅鑼湾を歩くと、脳内に溢れてきたのは「燃えよ!ドラゴン」でも「男たちの挽歌」でもなく、「夢中人」でもなく、いや、「夢中人」と「夢のカリフォルニア」はかなり流れましたが(注)、それを押し返すように流れてきたのはやはりこの「Mr.Boo」のテーマでした。
町中華(香港だからどこも町中華のガチ中華)で蝦球麺を食べる時、二階バスや路面電車に乗る時、脳内に流れるのはいつも「Mr.Boo」のテーマです。

2010年に香港旅行に行ってスターフェリーに乗った時、街角で大鶏排(注2)を食べる時、流れてきたのはやはり「Mr.Boo」のテーマです。

この映画はそういう映画のようです。

「この世に香港映画ってものがあるんだ!」というのを教えてくれたのが「燃えよ!ドラゴン」なら、カンフー映画(カラテ映画)だけが香港映画じゃないというのを教えてくれたのがこの映画でした。

更に、この映画がロードショー館で公開された時、広東語でそのまま公開されたんですね。史上空前のことでした。
それまではまだ広東語とか北京語は大々的にロードショー公開される映画としての「洋画の言語」としては認知されておらず、当時の香港製カンフー映画は英語に吹き替え。でなければ日本語に吹き替えられて邦画と二本立てで公開されていました。
私もそれとは気付かず、「香港=イギリス領=英語=洋画」として観ていたんです。

そこで公開されたこの映画。
「カンフーだけが香港映画じゃないよ。」「英語、フランス語、イタリア語だけが洋画じゃないぜ。」とばかりに公開されたのはコテコテのド庶民派香港コメディ「Mr.Boo」でした。
そう。だから後年、香港の街に立った時、この映画のテーマが脳内に流れるのは歴史的必然(?)だったのです。

注1
「恋する惑星」のことです。

注2
もとは台湾B級グルメらしいです。

追伸1
そして香港映画にはハード・アクションもあるということを教えてくれたのが「男たちの挽歌」。ラブ・ストーリーもあるでよということを教えてくれたのが「誰かがあなたを愛してる」。
いやいや、それだけが香港映画じゃないと教えてくれたのが「大丈夫日記」「北京オペラブルース」「霊幻道士」。
そしてトドメは香港にも「ハート・カクテル」があるということを教えてくれた「恋する惑星」!

追伸2
「Mr.Boo」はテレビ放映時の広川太一郎先生のケッ作吹替版で語られることが多いのですが、なんとしたことか、そちらは未見です。

追伸3
ジャッキー・チェンに触れる時間がなくなってしまい、すみません。
ジミーT

ジミーT