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クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦のpのレビュー・感想・評価

3.0
クレしんのルールで綺麗にまとめたテルマエロマエ。

ベン図で考えると、以下の重なりを描いている。

1.現代と当時の死生観の対比
2.現代と当時の恋愛観の対比
3.クレしんの世界観
4.タイムトラベル

美しいパズルのような、「うまい」作品だが、オトナ帝国のような、魂を揺さぶる作品とは言い難い。

車でのタイムトラベルは、バックトゥザフューチャーのオマージュして目配せしている。物語の頭からお尻にかけて、タイムトラベルをクレしんらしく滲ませているが、よくある未来を知ってるからこその立ち回りは皆無に等しく、未来や過去の主人公が引き金となった災いを解決するというタイムトラベル文法をクレしん文法で再解釈してアレンジしている。結果として、本作では洒落た悲しい脚本として綺麗にまとまっている。

戦国時代の登場人物のほとんどが、男系の近親者の戦死による死別を経験している。平成の死生観とかなり異なるが、所与のものとして、気丈に振る舞っている。恋愛観も現代人から見た戦国時代に関する考証としてあるあるを踏んでいる。刃傷沙汰を描けない制約から、現代と対比させながら、死生観と恋愛観のコンボを中心に物語が進む。

武器は弓矢、槍、銃が多く、刀の登場は少ない。これが時代考証の賜物なのか、クレしんがゆえの生々しい殺傷を回避したものなのか、判別がつかない。クライマックスのシーン近辺では血を流すことはせず、良くも悪くもクレしんの制約を感じた。

戦国時代という殺し合いの時代と子供向けの作品の食い合わせは極めて悪いと思うが、その制約の中で本当によくここまでうまくまとめたな…という所感
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