聖人のような扱いを受けるシモンという男は、飲みも食いもせず、ただただ天になるべく近い地から高いところで祈り続ける毎日である。
果たしてそれが人間としての模範的行動なのだろうか?
どんなに犠牲を払っても、どんなに禁欲を極めたり断食したって、信仰心とそれに伴った行動ができればいいのでは?とブニュエルは訴えたいようだ。
邪念が入ってきて、心の中で葛藤するシモンの人間らしさよ。それで良いではないか。人間性を欠いてまで自らを神に捧げるというのは、前近代的なのかもしれない。
砂漠の中に佇む高い塔はどこからも丸見えであり、シモンの動きは監視されているようであった。
彼を見守る母が蟻の巣穴を埋める様子は、まるでシモンの逃げ場がないことを表しているようだった。
このように宗教との向き合い方に対する疑問を投げかける作品であるが、至って聖書的かと思いきや、とてもパンクで突き抜けた作品である。
思いがけないラストにはかなり驚いたが、とてもブニュエルらしい皮肉がガツンと効いた見ごたえのある作品であると、強い自信を感じた。