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田舎司祭の日記のkuuのレビュー・感想・評価

田舎司祭の日記(1950年製作の映画)
4.5
日記帳+インク壺+ペン+スータン+ベレー帽+マント+自転車+門+口笛+ワイン+パン+ジャガイモ+聖体拝領+ウサギ+気まぐれな胃+栞+目+鞄+車+ランプ+手紙+聖書+筆跡+雨+銃声+告解室+ストーブ+暖炉+メダル+ベール+涙+祝福+聖母の手+夢+鶏の鳴き声+バイク+笑顔+教会+コーヒー+うたた寝+友情+神の思し召し+十字架◎



原作 『田舎司祭の日記』ジョルジュ・ベルナノス著
監督 ロベール・ブレッソン
音楽 ジャン=ジャック・グリューネンヴァルト

ルイ・デリュック賞・ヴェネチア映画国際賞受賞作品

あらゆるものを削ぎ落す作風で有名な監督らしいけど
この作品を観て私はそうは思わなかった
それとも過渡期にある作品なのか
どちらにしても私が思うに画面は鮮やかで表現は豊か
主演のクロード・レイデュの表情は輝いたり曇ったり心情がよく伝わって来た
その他の演者も子供を含めそれぞれ個性的で魅力的
映像もコントラストがはっきりしたシーンと少しぼやけたシーンがありどちらも素敵
音楽が場面に合っていて素晴らしかった

原作は未読だけど少し調べたら映画より面白そうなのでお正月休みにでも挑戦したい(笑)

オープニングが好き💕日記の表紙が好き
でも、描いてあるものは「若さ」の象徴なのか…ある季節を経た象徴なのか…期限があるということなのか…これからの話の展開を示唆しているようで胸が締め付けられる
そして挟んである破れた紙のインクが痛々しい
映画が進むにつれて日記の切れ端や乱雑なインクの意味が解って来る

神学校を出たばかりの若い司祭が田舎町に赴任し閉鎖的なコミュニティで悪戦苦闘する話

いろいろな住人に振り回され先輩司祭からのアドバイスも彼を苦しめる

特に司祭を取り巻く女性たちが興味深い

不倫する家庭教師の女、父と不倫する家庭教師を許せない少女、不倫する夫のことは諦めつつ昔幼くして亡くなった息子に執着する少女の母
家庭教師は不倫しているが少女のことは気にかけている
少女は大人の都合で心を乱され司祭に悪態をつくが司祭への別な思いも…
少女の母は息子の死で神に対し不信感を抱いているが司祭によって回心する
ところが回心した夜に死んでしまい話は複雑になっていく

最も気になったのが教義問答での少女たちの悪戯
首謀者はセラフィータ
彼女はその後も司祭を困らせるが…
話が進むにつれ彼女の置かれた環境が明らかになり胸が痛くなる
司祭が彼女に助けられるシーンは感動的だった
彼を介抱し帰り道に灯をともして彼の手を取る姿は聖母そのものだった
「あなたは悪くない。」
これ以上の赦しがあるのだろうか…思わず泣いた😭

そして最後に現われる神学校時代の仲間と同棲する女性
身を粉にして働き献身的な愛を捧げる彼女に無償の愛をみる
司祭は彼女に「友情」という言葉を使う
彼女はもうひとりのマリアなのかも知れない

さて、司祭を一番苦しめたのは彼自身なのではないかと思う
知識や真面目さやる気が経験不足によって裏目に出ることもある
そして健康上の問題…これはやるせない
砂糖の入ったワインに固いパンを浸して食べる
まるで聖体拝領そのものだ
たまに果物を食べるらしいが胃の調子が悪く食欲がわかないらしい
貧しさによる食生活の乱れだけでなくストレスも相当なものなのだろう
彼の体は弱り不治の病に侵されていく
痛み…死への恐怖…絶望…神父の苦痛や苦悩は未来に実を結ばない
しかし、神の生贄の子羊となった司祭に神の国の門が開かれる
最後に違う形で司祭の祈りは成就したように思えた

とにかく美しい映画だった
最初のシーンで司祭は初々しく輝いていた
途中は枯れていくような感じだったけど…
バイクのシーンで一瞬みせた笑顔が眩かった!
その表情はすぐ曇ってしまうけど…喜びや悲しみは表裏一体でランダムにやって来るもの
一瞬でも喜びに包まれたのなら幸いだと思う
ラストシーンの十字架が司祭の人生の全てを物語っているようで感動的😭💕
これは観て良かった🎬
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