【ジャズとアメリカ】
1947年のアメリカ映画。
時代設定は両大戦間の頃。ジャズの発祥の地であるニューオリンズを舞台に、酒場や賭博場を経営している白人男性ニック(アルトゥーロ・デ・コルドヴァ)と良家の令嬢であるミラリー(ドロシー・パトリック)の恋愛劇が展開される一方で、本人役で登場するルイ・アームストロングや、令嬢の家庭の女中役で登場するビリー・ホリディらによるジャズの演奏や歌唱がたっぷりともりこまれていて、音楽的にきわめて充実した映画になっている。
令嬢ミラリーはクラシック音楽を学んでいるが、他方で新しい音楽であるジャズにも理解がある。しかし母親や地域社会を取り仕切る白人たちはジャズを認めようとしない。けれども、ジャズはヨーロッパでも受け入れられていき、かえってアメリカの地方都市でヨーロッパ・クラシック音楽を信奉しジャズをバカにしている白人の頑迷固陋ぶりが浮かび上がるという構図も巧み。
ミラリーがいったんニックと別れるシーンで、たまたま発表会でオペラのアリアを歌っているのだが、それがヴェルディ『運命の力』であるというのが、なかなかいい。
ドラマ映画としても音楽映画としてもすぐれた作品になっている。