ひでやん

この庭に死すのひでやんのレビュー・感想・評価

この庭に死す(1956年製作の映画)
3.6
メキシコ時代のブニュエルが手がけたサバイバル劇。

前半は鉱山村を舞台に、採掘者と軍の衝突を描き、後半では密林へと舞台をガラリと変える展開は楽しめた。

私腹を肥やす支配者と、搾取される労働者。その登場人物の服装、建物の外壁や内装、床や地面などが同系色で、画面を埋め尽くす茶系の色合いに心の乾きと飽きを覚えた。

暴動が起こり、混乱の中で村から脱出する罪なき者たち。野性的な山師、善人の労働者と聾唖の娘、娼婦、神父という5人の逃亡者が熱帯のジャングルに入り、緑の世界で極限状態に置かれた人間を描く後半から一気に面白くなった。

雨に打たれ、飢えに苦しむ5人。足を捻挫した娼婦は男の支えがないと歩けず、善人は精神が崩壊し、無垢な聾唖は宝石を欲しがり、神父は役に立たず、村にやって来たよそ者が奮闘。

そんな彼らの格好はおしなべて貧相。泥と汗にまみれ、皆インディ・ジョーンズさながらの風貌になる。身分や立場は意味を成さず、アイデンティティの剥奪によって本質があぶり出される。

大量の蟻が蛇にたかるショットからパリの凱旋門、文明のない密林に墜落した文明、湖を背にしたロマンスから狂気の世界という予想不能の展開。冒頭でダイヤモンドを掘り、終盤で人間の内面を掘るサバイバル劇は見応えがあった。
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