浅野公喜

復讐鬼の浅野公喜のレビュー・感想・評価

復讐鬼(1950年製作の映画)
3.5
1950年という時代に既に作られていた人種差別を描いた今年亡くなったシドニー・ポワチエ主演のヒューマンサスペンス。

強盗犯の兄弟二人の治療を担当したシドニー演じる医師。その弟が亡くなり、リチャード・ウィドマーク演じる兄が医師が弟を殺したと思い、彼に対し憎悪をむき出しに。

白人という立場を利用した復讐劇を想像したのですがそういった場面は少なく、サスペンスを期待するとイマイチな部分も有りますが低所得者層の白人の黒人に対する差別意識が描かれており、負傷している故に嫌いな黒人の医師に助けて貰わなければ生きられない白人の矛盾、そして苦手な相手ではあるものの決して感情的にはならず医師として彼を助ける黒人の人格者ぶり等、複雑な関係性が描かれており非常に興味深く、自分より本来下に位置し、見下せる対象であるはずの相手が実際は自分よりもずっと優秀で社会的地位も高かった場合人間(特に男性)はその相手に対し嫉妬し時に攻撃を仕掛けようとしますがリチャード演じる白人はまさにその典型と言えるかも。

途中周りに何人もの人間が居る病院の中で年配の白人女性に唾を吐かれるシーンも有り、当時の黒人医師に対する風当たりの強さを想像出来ます。
浅野公喜

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