子持ちのカイロレン

戦争と人間 第一部 運命の序曲の子持ちのカイロレンのレビュー・感想・評価

4.0
 日中戦争開戦前夜からノモンハン事件までの約十年間を駆け抜ける、山本薩夫監督、全三部作(9時間半!!)の超大作。
 戦争を食い物にする伍代産業の面々が物語の中心となり、そこに関東軍と日本軍部中央の派閥争い、中国側の内乱、反戦活動家たちのドラマが複雑に絡み合う。当初は五部作想定だったそうで、第二部以降に出てこないキャストもやたら丁寧に描かれるのはその為。なのでこの第一部は風呂敷広げまくり。
 新劇、日活、東映キャストの芝居合戦の中、どっしりと安定感のある滝沢修、要所要所で部下を守る芦田伸介(素晴らしい声)、鼻を膨らませてヒールに徹する高橋悦史、など悪役である伍代産業の面々が非常に魅力的。
 歴史の知識がある前提で作られてるのが辛いところだが、日中の歴史を知る上でもぜひ多くの人に観てもらいたい。