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エル・クランのtheocatsのレビュー・感想・評価

エル・クラン(2015年製作の映画)
3.6
実話ベース

パッケージやあらましからは家族全員が役割分担で誘拐ビジネスに関わっているかのような感じだったが、そういうわけでもなく、とにかく主導的存在である元国家情報局員だった父親(まるでアルゼンチンの津川雅彦)には誰も逆らえないといった風。

簡単に人殺しを重ね凶悪極まる「誘拐ビジネス」。しかし、映像から受ける印象は深刻味が全然感じられない。
淡々ひょうひょうし過ぎていて、視聴している側も思考停止・神経麻痺にさせられていくような感覚。
理性と良心が死んでいるわけではない子供たちの、異常状態を知りながらどうにもできず手伝わざるを得ない静かな恐怖さえ伝わってはこない。

でありながら、実際の犯罪現場は本作の様に「映画的あおりなく」、平穏なうちに粛々と行われているのかもしれないなという、「冷めた感慨」とでもいえる心理にはさせられた。

ネガにもポジにも感情は動かなかったものの、シリアス犯罪劇なのにラテン的珍妙な「軽さ」を伴いつつ、薄くはない緻密堅固な構成と芯の通った「映像哲学(←何なのかは具体的に言えないが苦笑)」めいたものは確かに感じられたような気はするのでそこそこ評価。
でも高評価までは至らず。
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