がちゃん

夜のピクニックのがちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

夜のピクニック(2006年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

恩田陸氏の原作である小説が好きで、
映像化されてないかなとAmazonPrimeで検索してみると映画化されていたんですね。
自分のアンテナが劣化しているのを改めて感じました。

ある高校の伝統行事である『歩行祭』。
一昼夜賭けて80キロの行程を全校生徒で歩きぬく。

この「歩行祭」に高校生活の総括をこめる生徒もたくさんいる。
3年生の甲田貴子はこの歩行祭に一つの賭けを自分でしていた。

それは、それまで話をしたことのないクラスメイトの西脇融に声をかけること。

1年前の「歩行祭」では、今はニューヨークに行ってしまい今回の「歩行祭」には参加できない榊杏奈と一緒に歩いたなあなんて考えながら今回の「歩行祭」に挑む。

そんな杏奈から謎の手紙が届く。
「今日の歩行祭におまじないをかけておいたから。貴子の悩みが解決すること。今年も一緒に歩いているから」

なんとなくお互いを意識しているのがわかるクラスメイトは、この「歩行祭」の間に甲田と西脇をくっつけようといろいろ画策するのだが・・・

原作のいい雰囲気を壊さずうまく映画化されていたと思います。

歩行中西脇の親友である戸田君のセリフ、
「高校時代のうちにもっと青春しとくんだった」っていうのが身に沁みますね。

ただ80キロを友達と一緒に歩く。
いろんな奴がいる。
被り物をしながらおチャラけている者。
早々とリタイアし救護バスに乗せられてしまう者。
ムードメイカーで周りの雰囲気を盛り上げる者。
昼間は「ゾンビ」と言われるほど存在が薄いのに夜になると急にキャラ立ちする者。
それぞれみんなが青春なんだよね。

登場人物みんなが等身大で、
違和感なく感情移入できるのがいい。

監督の音楽のセンスもなかなかいいのですが、
「プラトーン」や「地獄の黙示録」をパロっているシーンは少々滑ったかな。

ロック野郎がディープ・パープルからクレイジー・キャッツに流れるところはめちゃくちゃよかっただけに残念。

そういえば僕の高校でも似たような行事があったな。
京都嵐山から母校(大阪府高槻市)まで徒歩で帰るっていうやつ。

この作品の登場人物らと同じように「なんでこんなことせなあかんの?」って文句ばっかりブーブー垂れてたっけ。

でも一見無意味だなって思っていたことでも自分史にはキッチリと刻まれているんだよね。

この一夜の「歩行祭」で登場人物たちは一つのエピソードを終えた。
そしてゴールの門をくぐった後カメラがゴール側からとらえると、
その門がスタートになっている。

憎らしくなるほどうまい演出だ。
原作を先に読んでいただけに結果はわかっていたのに、
不覚にもこのシーンで涙が出てきてしまった。

いい作品でした。
思わぬ拾い物をした気分です。
がちゃん

がちゃん