1920〜1950年代のハリウッド映画は、スタッフが充実したスタジオシステムで製作されている。監督の技量がそこそこでも、人物(たち)はしかるべき構図に収まり、ショットはアクションでつながる。脚本が水準に達していれば最後まで観ていられる映画ができあがる。
オーソン・ウェルズの未完作品『ドン・キホーテ』や『風の向こうに』を観ると、ウェルズがスタジオシステムでこそ才能を発揮できたということが痛感される。屋外で少数のスタッフで即興で映画を撮る映画作りは不得意だったのだろう。死後に残された断片をつなぎ合わせた「作品」はホームムービーのようだ。ジョナス・メカスの作品とも違う。
ジョージ・ラフトという俳優は歌舞伎役者ような佇まいだ。ウィリアム・ホールデンは、後年の『ワイルドバンチ』とか『Breezy』の老人顔からは想像もつかない小僧っぷりだ。あと、母親役の人は志村喬に似ている。