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スローターハウス5のあのレビュー・感想・評価

スローターハウス5(1972年製作の映画)
4.3
捕虜収容所に向かう列車の中の毛布から、帰国後の病院を除く。

「ガープの世界」でも、自宅のブラインドから様々な過去を除いたり、車の中から夫婦そろって窓越しの我が子を除いたり色々ありましたが、ジョージ・ロイ・ヒルは、別の時間を除くという、時空を超えた劇中劇で長大な時間を処理するのが抜群に上手いと思います。だからこそ、脚本に頼り切りで、展開で楽しませるのではなく、記憶の重なりで語りかけてくるんですね。フェリーニの語り口と近からずも遠からずな気がします。

ガープを乗せたドクターヘリのように、ブッチとサンダンスの最後のストップモーションのように、ピルグリムは自分の最期を知りながらも別の惑星で呑気にセカンドライフを送っている。非常に悲観的な運命論とは裏腹に、呑気な画面が独特の浮遊感を作っているのは、ジョージ・ロイ・ヒルのある種の作家性なのかと思います。クセになりますね。

ノーランみたいな金かけた時間演出なんていらないんです。オッペンハイマーなんて絶対観に行かないぞ笑

時間を超越し、どこへでも好きな記憶に飛んでいけるにも関わらず、毎度のことドレスデンに送り返されることが、戦争のトラウマの大きさと、強い反戦を語っているのが、ラスト近くまでよく分からないのにも関わらず、こんなにもシームレスに時間を繋げられるのは確かな腕がなせる技でしょうね。
あ