このレビューはネタバレを含みます
「短い記憶がない。昔の自分は覚えてるが、ケガをしてから新しい記憶が消えるんだ」
クリストファー・ノーラン監督の出世作。前向性健忘で記憶が10分しかもたない主人公レナードが、体のタトゥーや写真に書いたメモを手掛かりに妻を殺した犯人を探すサスペンス。冒頭はテディを射殺するシーンから始まり、「なぜレナードはテディを殺したのか?」というシーンの真相を、逆再生される構成の中で掴んでいくトリッキーな作品。
実は妻を殺してしまったのはレナード自身という驚きの結末で、その都合の悪い記憶を受け入れられず、レナードは自分自身の記憶を改竄して犯人探しを始めるという恐ろしい筋書き。サニーの妻は存在せず、自分自身がサニーがやったことをやっていたと分かった時は怖かった。記憶がもたないことをテディやナタリーに利用されて殺人を犯してしまったというのも皮肉。
今でこそ『TENET』という全編逆再生のとんでもない作品ができてクリストファー・ノーランの天才性は確たるものになったけど、2001年から"逆再生"構想があって、20年の時を超えて全編を巻き戻す野望を達成したことに震えた。
以下、セリフメモ。
「女房に許しを超え。頭を撃ち抜く前にな」
「お前は自分のことも知らない。知りたいだろ?さあ、地下室へ行こう」
「本当に覚えていたいことは体に書く方が確実だ。絶対に失くさない」
≪ジョン・Gが妻を犯し、殺した≫
≪サミーを忘れるな≫
「ここにいたが、今は304号室だ」
「いつから俺は一人なのか。ふと目覚めると女房がいない。トイレでも行ったかのように。でもなぜか、彼女は決して戻らないと知ってる」
「向こうがあなたを見つけるわ。あなたの車を教えた。ひどく殴られたから」
「最後に覚えてることは?」
「女房だ。女房の死ぬ姿だ」
「分かるか?怒っても、罪を感じても、その理由がわからない」
「サミーは妻の死も知らずにいる。俺は間違ってた。あの女房のことも。サミーは詐欺師ではなかった」
「カミさんの命は助かってた。君の症状を疑い、苦痛と苦悩で身体もボロボロだった。インシュリンを…」
「それはサミーだ。話したろ」
「何度も自分に話すようにな。忘れないように」
「サミーは最後療養所へ行ったはずだ」
「サミーは詐欺師だった。君がそれを暴いた。糖尿病は君の妻だ」
「俺がジョンだ」
「テディだろ」
「母はそう呼んだ。俺の本名らジョン・ギャメル。安心しろ。まだジョン・Gは山ほどいる」
「また謎解きを始めると?ジョン・G捜しを」
「俺が物語を作るって?君に関しては、そうしよう」
「記憶は自分の確認のためなんだ。みんなそうだ」