けんたろう

鏡のけんたろうのレビュー・感想・評価

(1974年製作の映画)
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なにが鏡なんだ?


嗚呼、もう訳が分からない。一体何ん何んだ此れは。

成るほど始めは物語りも追へる。然し途中から、さっぱり訳が分からなくなる。更に其処から──丸でブーストでも掛けたかのやうに──此の物語りに、どんどこどんどこ置いてけぼりにせらる。
さすがに途中から理解を放棄した。

まあ然し其れでも好い。
理解なんて究極のところ何うだって好い。

何んたって映像が非常に美しいのである。
此の美には、もうはや酔ひ痴る。
屹度此れは、画の構成は勿論、動きの描写に依らん。即ち、風の描写、然うして人の歩き、果てはカメラの動きまでもが美しかったのである。云ふなれば──速度! 畢竟、其の速度である。果て何んたるか、此の美しき速度は!

さて、私しの理解を超えた、全く訳の分からない映画なれども、然し不思議なことに心を落ち着かする一作。
成るほど面白いが、然し改めて今思ふに、矢張りタルコフスキイは映画館で観るに限らう。