Omizu

夜の鼓のOmizuのレビュー・感想・評価

夜の鼓(1958年製作の映画)
3.8
【1958年キネマ旬報日本映画ベストテン 第6位】
『また逢う日まで』などの今井正監督が近松門左衛門「堀川波の鼓」を映画化した時代劇。脚本は橋本忍と新藤兼人がつとめ、主演は三國連太郎と有馬稲子。

今井正のクラシカルな演出手腕が光る秀作時代劇。参勤交代で江戸に行っていた間に妻に何が起きたのか、羅生門式に複数の人物の証言で語られていく。

有馬稲子、三國連太郎の演技も非常にいい。今井正はとにかく作風が広い人だな。まさに職人監督という感じ。『また逢う日まで』のようなメロドラマ、『武士道残酷物語』のような激しい時代劇、『真昼の暗黒』のような社会派ドラマ、全てを上手くこなす。

本作で思ったのは人物の撮り方がとても上手いなということ。有馬稲子、三國連太郎の目を印象的に切り取っている。そのショットだけで恐怖、哀しみ、諦めなど様々な感情を表現しているのが素晴らしい。

本作はDVDが出ておらず、JAIHOでの配信を逃すとVHSでしか観られなさそうだったのでこの機会にみてよかった。今井正らしい端正な秀作時代劇。なかなか面白かった。
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