小春

少年は残酷な弓を射るの小春のネタバレレビュー・内容・結末

少年は残酷な弓を射る(2011年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

とても惹かれる作品だった

いろいろな捉え方ができると思うけど、ケヴィンは自分からいつ離れてもおかしくない母親に対して幼い頃から執着し、曲がりすぎた彼なりの愛情表現をしていたのかもしれないって思った
エヴァは確かに虐待とかはしてなかったけど、でも、子供ができたからキャリアや自由を手放さざるを得なくなった的な被害者意識をずっと持ってて、それが行動に出ちゃってた気がする
ケヴィンは異常に鋭かったからそれに気づいてしまっていた
その上でケヴィンは母親の注目を集めるために問題行動や発言をしてたかもしれないなって思った
子供は親からの愛情に飢える存在
ケヴィンはそれを満たしてもらいたくて、でも母親が自分を愛してくれている自覚が全くないから、問題行動をとって注目を集めてたんだと思った
不思議と母親を嫌って、憎んでいたという風には思えなかった

あと、そもそも論だけどケヴィンとエヴァは一緒になってはいけなかった存在な気がした
ケヴィンは元々ある程度の残虐性を生まれつき備えてて、育たないようにできるはずだったけど、エヴァがそれを芽生えさせてしまったかもしれないって思った
警察に連行されているとき、ケヴィンはエヴァを探し、見つけたと思ったらずっと見つめてた
父親と妹も最初に殺していた
ケヴィンの中にはそもそも母親しかいなかったように思えた
一方エヴァは全てを嫌がらせだと片付けてた
そんなエヴァだからケヴィンに気がつけるわけがなく
だからあの虐殺に至るまでに2人の関係性は拗れてしまったって解釈できた
たぶん一緒になっちゃいけない二人が一緒になった結果生まれた悲劇だなって

ラストシーンについて色んな解釈があって、例えばエヴァが自殺を決意して、ケヴィンがそれに気づいて動揺する
反対に息子と向き合う覚悟を決めて、それがケヴィンに伝わった
などなど
私はお願いだから自殺じゃなく覚悟が決まったからでいてほしい思ってしまった
もし自殺だったらあまりにもケヴィンが不憫な気がしちゃって
お願いだから遅くなったけどこれからはちゃんと向き合うっていう流れであってと切実に思った
正解はないように作られた映画だったから知りようがないけれど、でも願ってしまった

個人的にいちばんいいなと思ったシナリオは、息子の部屋を再現したのは、エヴァ自身にもケヴィンには対する歪んだ愛情か何かが潜んでて、それが彼女の行動に繋がっていた、そしてその行動によって表面化された
面会のときにそれがケヴィンにも伝わった
そして初めて、互いに対して歪んだ感情を抱いている二人が通じ合った
だからあのハグで、解放されたから白い世界にでた
っていう風に共依存で締めくくるのいいなと思った
ここまで考えたときにこの映画は、未熟なまま子供を産むことに対する批判、子供は親の愛情がないと歪んでしまうという警鐘、親になる覚悟の大事さについて描いているんじゃないかって思った

とにかく良かった
本当にとても良い映画だった
色んなことを考えて、でも文章にできなくて、言えることだけ書いただけでもこんな長文になってしまって
CDのI Love Youとか熱が出た日のあの態度の真意とか学校での立ち振る舞いとか、あげればキリがないほど考えさせられるシーンがいっぱいだった
誰かと飲みながら語り尽くしたいって思ってしまった
大好きな作品になった
ぜったい円盤買う
小春

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