ちろる

今日もまたかくてありなんのちろるのレビュー・感想・評価

今日もまたかくてありなん(1959年製作の映画)
3.6
オープニングとエンディングの方で作品のカラーがガラッと変わってしまう珍しい作品。
なのに穏やかに流れる辻堂の映像をほぼ同じアングルで見せて、そこにより一層残酷さが漂う。

貧しい生活ゆえに辻堂の一軒家を上司に貸し出すことに決めた若い夫婦は夏の間それぞれが散り散りとなり生活することになる。

妻は実家のある軽井沢へ、夫は友人の家へ居候。
避暑地でもある軽井沢という地には似つかわしくない、チンピラたちの登場あたりからお話の色合いはガラッと変わり、なにやら穏やかではない展開に、、
時代ゆえの仕方ない心の咎を背負った元軍人と、戦争を通過しなかった怖いもの知らずの若者たちという構図。
と書くとまるで戦争賛美のようで具合が悪いが、痛みに対して鈍感な現代の私たちもこの若者たちの姿に反面教師として感じるものがあるのではないかと思う。

赤の他人の平穏な日々を守る為に、壮絶になかば捨て身で人が戦い血を流しても、無情に時は流れていくのはどの時代も同じ。そしていずれそのことへのありがたみも薄まってしまうののも必然だと思うと無性に虚しくなってしまう。
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