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痴人の愛のRのレビュー・感想・評価

痴人の愛(1934年製作の映画)
4.1
古い映画を見ていこうシリーズ、お次はジョンクロムウェルという監督のこの作品! どうやらあの伝説のベティ デイヴィスがブレイクするきっかけとなった映画らしい、ということで今回見てみました。主人公は、絵描きになりたかったが、才能ないよ、と言われて医学に転身、頑張って勉強している男ケリー。ある日、ケリーはとあるレストランでミルドレッドというウェイトレスに好意を持ち、そこに通うようになる。ベティデイビスがこのミルドレッドを演じているのだが、いかにもひと癖ふた癖ありそうなギョロ目の女。あるときは素っ気なく、またあるときは媚びに媚びてくる、アブナイ女。男を誘惑する時か男を破滅させるとき以外、男と目を合わせようとしない女。ややこしさ満載。やめときゃいいのに、そんなミルドレッドをいよいよデートに誘い、ふたりでシャンパンを飲むことに。それ以前から、なーんかミルドレッドっておかしな顔してるなーと思ってて、アップの多いこのタイミングでよくよく見ると、眉毛が離れすぎてるんやわ! 当時の流行なのでしょうか。めっちゃポカンと間抜けに見えるやん! おもろ!!! 😂と思ってたら、シャンパン飲みながら必殺上目遣い!!! うお!!! コケティッシュ!!! と思いきや、上を向ききるとやっぱりポカン。ミルドレッドに夢中になっていくケリーを演じるのがレスリーハワードという人で、線の細さが全身・全顔面から伝わってくる! たえず憂いと哀しみの表情! この軟弱さ! でもしょうがないのかもしれない、彼は内反足で片足を引き摺るようにして歩き、コンプレックスに思っているらしいのだ。いやー、君みたいな男がこんな強かな女、相手にできるわけねーじゃん、やめとけ、やめとけ、と思うのだが、彼はどんどんのめりこみ、遂には婚約指輪をプレゼント!😫 ところが! なんと彼女は、たまにレストランで見かけるおっさん客と結婚することになったのだと! ショックで心神喪失するケリー。Time is a great healer. やがて彼は立ち直り、メイドのための雑誌記事を書いたりしてる凡庸な女と恋人関係になる。まぁ欲を言わず、堅実に、それくらいの人と一緒になるのが向いてるよ君には、と思ってると、戻って来るのです、妊娠したミルドレッドが! 結婚するはずだったおっさんに捨てられたんだと! そして、何とも哀れな彼女の姿に、再び魅了されるケリー……さて、本作で一番目を引くのはやっぱ誰がどうみてもミルドレッドを演じたベディデイヴィス。こんな気分屋で強欲で我儘で冷酷で下品で破壊的衝動にはち切れんばかりの軽侮と憐憫しか誘わないみっともないズベタに恋してしまう男がいるというのがそもそも訳わからないのですが、そんな女であるにも関わらず、それを天真爛漫に演じたベティデイヴィスの存在感がすごい! さすがとしか言いようがない! 最後の、懇願から衝撃に変わり、完全に抑制を失ったビッチと化す演技の凄さ! よく考えたら、この映画はサディストとマゾヒストの話でもありますね。最後は意外なほどマトモに片付いてしまいますが笑 あと、僕的にはストーリーテリングが面白かったな。そもそも語りのテンポがものすごく速い上に、めちゃくちゃにいろんなことを省略しまくってて、さらにそれを加速させるモンタージュ。なのに目まぐるしさを感じさせない。しかも、力強い。ジョンクロムウェルという監督のスタイリッシュな職人技を感じました。俳優ふたりから見事な演技が引き出されているのも、きっとこの監督のおかげなのでありましょう。知らんけど。他の作品がどんな感じなのかも気になってきました。どなたかおすすめ作品がありましたら教えてください。ジョンクロムウェル監督です。
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