ちろる

銀河鉄道の夜のちろるのレビュー・感想・評価

銀河鉄道の夜(1985年製作の映画)
4.6
1時間半で帰ってくるよ!
そう言って星祭りを見に出かけ、心ない言葉から逃げ出したジョバンニはその夜不思議な旅の入り口に立つ。

時計屋さんの中にあった銀河に吸い込まれるように、いつのまにかジョバンニは汽車に乗っていた。

人影のないステーション
無機質な音を立てるメトロノーム
無人の街
果てしなく長い下り階段
水晶の光る地下水
タイタニック号で失われた命たち

生と死の間におかれてジョバンニは生を強く求め、カンパネルラは闇の中に溶け合う。
慕い信頼した友人との不条理な別れは宇宙の中を何周漂ったとしても晴れるものではない。

それでも、私たち人間はそういった死の恐怖の中にまみれて明日を望まなければならないことを彼らの旅を持って知ることになる。

幻想的な映像と細野晴臣さんの素晴らしい音楽が宮沢賢治さんの世界観を崩すことなく静かにわたたちの心に溶けていく本作。

汽車の音が鳴り響く暗闇の映像が幼い頃、とても怖かったのですが改めて大人になって鑑賞すればこの作品がこんなにまで長く愛されるのが必然であることが分かります。
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