Fal2018

マクベスのFal2018のレビュー・感想・評価

マクベス(1948年製作の映画)
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同じく1948年のローレンス・オリヴィエによる『ハムレット』と比べると、本を丁寧に読み込んで文学的な勘所を教えてくれるオリヴィエ版演出がきわめて教育的なのに対してスペクタクル的なサービスばかりが過剰なウェルズ版マクベスはあんまり好きじゃないなというのが正直なところ。

マクベスがバンクォーの亡霊を見る場面ではテーブルの端に誰もいない「客観」と誰もいないテーブルの端に血まみれの亡霊が佇んでいるマクベスの「主観」を別に撮影して切り返しするといった演劇ベースの演出では選択しづらい手法が採用されていた。他の場面でもボイスオーバーが多用されマクベスの意識のドラマを観ているような感じ。

ただtomorrow speechのところでマクベスが見ている雲(霧?)景色がうつる演出だけはよかった。ここでのout out brief candleという箇所のために、序盤で祈りのあとに蝋燭を吹き消す場面をわざわざ挿入していたわけで、そこさえ読み取ればウェルズも浮かばれてくれるものと思いたい。その後の映像化作品でも『マクベス』といえば霧というのが共通認識になっているようだが、そのルーツがここだとすればなかなかすごい。
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