odyss

クレアモントホテルのodyssのレビュー・感想・評価

クレアモントホテル(2005年製作の映画)
4.2
【老婦人が主役のリアルなメルヘン】

老婦人がヒロインの映画としては、この作品の少し前に『ジュリエットからの手紙』がありましたが、比較するのも変だけれど、断然こっちのほうがいいなと思いました。

どちらもメルヘンなんですけど、『ジュリエット』は設定としては面白いものの筋書きはかなりご都合主義的で単純であるのに物足りなさを感じました。一方、この『クレアモントホテル』は、老婦人がスコットランドからロンドンに出てきて安ホテルに長期滞在するうちに、たまたま知り合った青年をホテルの人たちに孫だと偽って紹介するところから始まります。

老婦人とイケメン青年の友情、というのも設定としてはメルヘンチックです。しかしホテルに長期滞在している他のお年寄りとのやりとりや、老婦人の家族関係、青年の家族関係など、色々な要素がたくみに絡まりあって、メルヘンながら人生の苦さやさびしさ、滑稽さなどを多面的でたくみに表現しています。決して大げさにではなく、老いたる大国の英国らしくと言うと語弊があるかもしれませんが、しみじみとしていて、しかし湿っぽくならない軽みを感じさせて見ていて飽きないし、メルヘンながらリアルさをそれなりに備えているところに感心してしまいました。

配役も万全。老いた役者たちも達者ですけど、やっぱり見ていて気持ちのいいのは若者。老婦人と並んで主役である青年を演じるルパート・フレンドがハンサムで好感度が高いし、彼のガールフレンドになるゾーイ・タッパーも可愛い。二人がこれからどんな映画に登場するか、大いに期待したいところです。
odyss

odyss