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眼の壁のakrutmのレビュー・感想・評価

眼の壁(1958年製作の映画)
3.4
ベストセラー推理小説『点と線』の次に松本清張が発表した同名長編小説を、「メロドラマの巨匠」と呼ばれた大庭秀雄監督が映画化した作品。『君の名は』で主演した佐田啓二が、本作品でも主人公の会社員を演じている。ストーリーとしては、ある電機メーカーの会計課長が資金繰りを焦るあまりに詐欺被害に会い自殺するという事件に端を発した連続殺人事件の真相を、自殺した会計課長の部下である会社員とその学生時代の友人の新聞記者が解明していくという内容である。

推理サスペンスとして観ると、事件の裏側の描写がやや弱いので、推理サスペンスならではの謎解きとかハラハラ感はあまり感じられないのは残念である。1時間半ほどの長さの中で小説の内容をすべて描くのは難しいだろうから、ストーリーを大幅に簡略化した決断は仕方ないだろう。その分、主人公の会社員・萩崎竜雄を描くことを中心に据えているようであり、彼や新聞記者のロマンスも挿入してサスペンス一辺倒ではない構成は、賛否両論あるかもしれないが、個人的にはそれほどの失敗ではないと思う。

宝塚を退団したばかりでヒロインに起用された鳳八千代の演技も良かったし、新聞記者の婚約者でちょっと出演していた朝丘雪路の若っ!という感じもgood!それでもやっぱり主人公を演じた佐田啓二の、真実を追い求める誠実なサラリーマンの姿が印象に残った。やっぱりいいなあ、佐田啓二。
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