ヒデ

東京物語のヒデのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.0
「妙なもんじゃ。自分が育てた子供より、いわば他人のあんたの方が、よっぽどわしらに良くしてくれた。いやぁありがとう」

子供達に会うために上京するも歓待されなかった老夫婦と、一人優しく接する義理の娘の話。

義理の娘役の原節子がとにかく綺麗で、彼女の優しさにグッと来る。血の繋がりのない義親にここまで優しくできるのは凄いことだ。

一方、忙しさを言い訳に世話を放棄する息子たちはなかなかに酷く、資金カンパして熱海の旅館に押し込んだり、まだ死んでないのに喪服持ってこうとか言ったり、葬式後にソッコーで肩身の分配の話をしたり、所々で「うわぁ…」となる行動が多かった。ただ大阪にいた方の息子の「僕、孝行せなんだでなぁ。今死なれたら敵わんわ。さればとて、墓に布団も着せられずや」のセリフは刺さる。孝行したい時に親はなし。

夫婦が尾道に戻ってからの展開は切なく、ほろりと泣ける。特におじいちゃんが部屋に一人佇むラストシーンの絵が印象的だった。


以下、セリフメモ。


「ねぇ。兄さん。ちょっと三千円ばかし出してくれない?お父さんたちに熱海の宿に行ってもらおうと思うの」

「あ〜ら、もう帰ってきなすったの?もっとゆっくりしてくればよかったのにぃ」

「ハハハ、とうとう宿無しになってしもうた」

「いやー。親の思うほど、子供はやってくれませんなぁ」

「なぁ紀さん、ええ人があったら、あんたいつでも気兼ねなしにお嫁に行ってくださいよ。あんたには苦労させ通しで、あたしゃすまんすまん思うて…」

「子供も大きうなると変わるもんじゃのう。しげも子供の頃はもっと優しい子じゃった」

「私ら幸せでさあ」
「そうじゃのう。ま、幸せな方じゃのう」
「そうでさ。幸せな方でさ」

「尾道からよ。≪ハハ キトク キョウコ≫」

「喪服どうなさる?持ってく?持っていきましょうよ。持ってって役に立たなかったらこんな結構なことないんだもの」

「お母さん、どうも良くないみたいだ。明日の朝までもてばいいと思うんだ」
「そうか…いけんのか…」

「人間なんてあっけないもんね。あんなに元気だったのにね」

「私、ずるいんです。お父さんお母さんが思うような人間じゃありません」

「気の利かん奴でしたが、こんなことなら生きとるうちにもっと優しくしとけば良かった。一人になると急に日が長う感じますわい」
ヒデ

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