いろどり

処刑の丘のいろどりのレビュー・感想・評価

処刑の丘(1976年製作の映画)
4.0
ソ連で最も偉大な女性監督として知られるというラリーサ・シェピチコ監督。
夫は「炎628」のエレム・クリモフ監督。
あまり作品が日本に渡ってきていないのが残念でならない。
41歳で交通事故死しているので作品自体の数も少ない。長編映画は4本のみ。
こんな骨太な社会派だったとは。
夫婦揃って一流の映画監督。
ベルリン国際映画祭金熊賞受賞。

生きるために国や同胞を裏切れるのか。裏切った先に得るものはあるのか。

ドイツ兵に捕らえられたソ連パルチザン部隊の兵士二人の葛藤を、哲学的なセリフで丁寧に辿るからこそ、終盤の見せ場のそれぞれの「顔」から目が離せなくなる。
弱々しかった青年が、誇りを捨てず仲間を守ると決意してからは凛とした精悍な顔つきになるのと、自分の命を守ると決めた兵士の顔の対比に人間の本質を見た。
タイトル通り、処刑される丘までぞろぞろと歩いていく様子は、まるでイエス・キリストのゴルゴダの丘を思わせる。

不穏な音楽には、思わず自分を律したくなる戒めのパワーが込められているように感じた。
まつ毛にまで雪がまとわりつく銀世界で、戦争とは、生きるとはを問う。

人間の本質に焦点を当てたソ連の戦争映画の名作。
いろどり

いろどり