厳しい現実の中で懸命に生きる人たちがラストにささやかな光を見つけるパターンが多いカウリスマキ作品の中にあって、これはちょっと異色。
同居する母と義父のために給料を差し出し、ワンピース一枚買っただけでも「返して来い!」の大騒ぎ。
虚しい日常から救い出してくれそうな男と一夜を共にするが、それも又不実な男。
不幸続きな女はとうとう復讐に動き出す。
冒頭からテレビでは中国の天安門事件のニュースが繰り返し流されていて、あの戦車の前に立ちはだかる人の映像が映される。
武力によって国民を黙らせたあの事件と、力によって服従させられる主人公の女が少し重なる。
カティ・オウティネンがカウリスマキ監督のミューズとなったのが納得の作品でもある。彼女の無表情で幸薄い雰囲気は本作にもぴったりだった。
社会的弱者を温かく描く中でも監督は時々クスッと笑わせてくれる。
薬局の店員が言った様に効き目は「イチコロ」だったね。
異色ではあるけど、この結末も主人公にとってはある意味精神的な安らぎかも…と思う。