半兵衛

土と兵隊の半兵衛のレビュー・感想・評価

土と兵隊(1939年製作の映画)
2.5
田坂具隆監督特集がフィルムアーカイブでおこなわれると聞いて久々に見たくなってしまった。

映画自体はさほど面白いというわけではないが、国策映画なので虚飾はあれど天皇を中心とした国家を純朴的に信じていた当時の日本人の心情がつぶさに映し出されているのが興味深かった。そして終始一貫弱者から見た社会のドラマを拾い上げてきた田坂監督の視点は戦争映画においてもぶれておらず、疲弊しても広大な中国の大地を歩き続けて次の任地まで向かう姿を淡々と描き戦争で生きる庶民の大変さを切々と訴えている。ただその結果を知る現在の我々からするとその誠実さが社会全体の状況に対して盲目すぎてかえって怖くなってしまう。

ドラマはほとんど存在せず、本当に劇の大半を兵士たちがとぼとぼと歩いていく。そしてプロの役者さんたちが本物の兵士さながらの薄汚れた格好になり険しい顔立ちになり戦場を行進していくセミドキュメンタリー演出に目を見張る。でも正直内容が薄いのでただでさえ長い二時間が余計長く感じられた。

ラストはいかにも理想的な日本人の信念を押し付けているような(でもスタッフはそれを信じているのでたちが悪い)展開、そして頑張った兵士たちのその後のことを考えると胸が痛い。
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