Ria

天使の涙のRiaのネタバレレビュー・内容・結末

天使の涙(1995年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

初めて観たときは恋する惑星のフレッシュさの方が印象濃くてなんとなく思ってたのと違うかも…って印象あったけど、
1年越しに見た去年の夏、本当にめちゃくちゃ好きな映画だってことにやっと気づいた、というか実感したことを未だに鮮明に思い出す。

ストーリーは点と点で繋いでいくような方式だからその靄が初見時は分かりづらかったが、2回目鑑賞時、それこそがこの映画の何から何まで無駄がないノスタルジックな雰囲気の糧になっていたことに気づいた。そのノスタルジックさというのも、ただ単純に旧香港の情緒というものに収まるものではなく、そこで生きるキャラクターたちの持つやるせなさ、純情、優しさ、諦念、といった感情のことを包括して感じられるものだと思った。

特に好きな場面、愛する父親を亡くしたモウが「親の遺品整理してる瞬間にやっと自分が子供じゃなくて大人だってことに気づく」 っていうのはさすがに唯一無二の、残酷で切なくて惚れ惚れする表現だと思った。以前撮っていた笑顔の父親のビデオの反響の中、無邪気な子どものようでしかいられなかったモウが急に寂しさと自立を背負う。家族愛が強い私は、正直自分に重ねてこの場面を見て余計にどうしようもなく切なくなったのもあるが、死の哀憐を経てやっと気づくことができた成長、という人生を生き抜くための真理が込められているところが、非常に尊く感じられた。

そしていちばん好きな台詞は、ラストシーンの、

「すぐに着いて降りるのは分かってたけど今のこの暖かさは永遠だった」

この台詞、私が観た映画の中で一番心にぶっ刺さって抜けない。本当に共感できてしまった。なぜなら実際、たとえ最終的に辛い結末を迎えているものだとしても、たったの一瞬でも楽しかった記憶がある思い出を刹那的に愛することを、私は一生辞められていないからだ。でも、それが悪いことだとは思わないでいたいし、自分を信じてあげたい。この台詞は、そんな私の人生にずっと蔓延る感情を救ってくれている。

この台詞が発されるラストシーン、モウとエージェントの心の霧がようやく晴れるかもしれないという兆しが、トンネルを出た瞬間に映る開けた明るい灰色の空のカットに暗示されている気がする。そのバックで流れ始めるOnly Youの爽やかさも良い。

その場面を見届けているとき私は、涙をボロボロ流し、あたたかい希望を胸に感じ、幸せに満たされていた。
Ria

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